資料研究

「5つの振動パターンと強力な吸引……」

　サラサラと手に馴染むシリコン製のおもちゃだ。

　昔は硬いプラスチック製が多かったから、肌に当たる部分のバリが痛かったこともあった。最近は柔らかいおもちゃが多くてうれしい。

「排気口ってどこでしょう」

　吸引する穴はすぐに分かった。胸に被せるシリコンカップの真ん中、振動するシリコンの舌の少し上、爪楊枝で空けたくらいの小さな穴が開いている。強力吸引って書いてあるくらいだから掃除機みたいなのを想像してたけどこれで大丈夫なのかな。

　20センチくらいの小柄な本体をあちこち見てみると、背中側に穴を2つ見つけた。一方は排気口だとして、もう一方は電源の差し込み口かな、たぶん。こちらの穴もやはり小さい。お腹側にはボタンが2つ、1つは振動ボタンでもう1つは吸引ボタンみたい。

「昔はもっと大きいのばっかりでしたからバキュームを止めるリリースボタンとか、全部の動作を一気に止める電源ボタンとか、あったんですけどね」

　今日試す予定のコレはそういったものが無い代わりにすごく小柄でかわいらしい。ひ弱だから大丈夫だよとでも言いたげだ。USB充電式なので電池の大きさでパワーを想像することもできない。

「んー、と。ローションはこれくらいで……」

　いつも通り指先に出したローションを乳首の周りに塗っていく。

　冷たい。

　私はローションは冷たい方が好き。その方が乳首が勃ちやすい気がする。乳首は勃っていない方が気持ちいいっていう人もいるけど、それが普通なのだろうか。

「ふ……、んっ……」

　上はもう裸になっているので、そのままおもちゃを左胸に押し当ててみる。カップ部分は6センチくらいで、その頂上から緩やかな曲線の取っ手部分が伸びている。ボタンは2種類、どっちから押そう。

（どっちがどっちのボタンでしたっけ……、とりあえず、なんか水みたいなマークが付いてる下の方を――）

「いっ――？？！」

　爪で思いきり弾かれたような衝撃。

　高速で振動するシリコンの舌が乳首をしごき上げる。

　もっと緩やかな刺激を想像していたからあまりのパワーで思わずカップを胸から離してしまう。

「ふーっ、ふーっ…………う、ん。分かった、分かった。そういうこと」

　下のボタンは振動だ。

　下は振動。

　うん、問題ない。

　つまり、残った方が吸引ということ。

　大丈夫。

「じ、実は気になってたのは吸引の方ですから。こっちが本命。こっちが気持ちいいかどうかが問題」

　再びカップを胸に被せおそるおそるボタンに指をかける。ボタンは少し固い。指が震えてる気がするけど、たぶん気のせい。

　吸引の起動は長押し式だ。1秒くらいボタンを押し続けると吸引の方の電源が入り、もう一度押すとバキュームが始まる。機械のくせに焦らされているようで少し悔しい。でもまあパワーが足りなかったり気持ちよくなければそれでおしまいだ。こんなかわいい見た目のおもちゃで、そんなえぐいようなコト――

「あっ、んっ、ぇっ？！　待って、これっ――」

　ヴィイイイイイ、ヴィイイイイイ、ヴィイイイイイと規則的な機械音。

　それに合わせて吸われる、吸われる、カップの内側が全部きゅううと怖いくらいに吸いつかれる。

（嘘っ、思ってたのと全然違――、これ本当に吸われる、んですね……）

　よく聞いてみると音はそれほど大きくない。ただ裏腹にちゅうちゅうと吸いつく力は強い。規則的なバキュームで胸の形が変わっているのが見える、手を放してみると胸に張り付いたまま離れなかった。

　本当に機械の赤ちゃんに吸われているみたい。

　単なる乳首への刺激とは違う。胸に吸い付いて離さない刺激が気持ちよく、必死に吸い上げるこのおもちゃが愛おしく思えてしまう。もし本当にヒロインを襲う機械の敵がいたらこういう感じなんだろうか。そんなことを考えてしまう。

「はっ、ふーっ、ふー……、これ、は……、はーっ、参考に、なりますね」

　刺激に慣れないまま思い出した。私はこのおもちゃの半分の機能しか使っていない。

（吸引と振動、同時……）

　振動の方は、正直に言うと私には少し強かった。シリコンの舌がかなりの速度で乳首を弾くので気持ちいいのと痛いのが一緒に来るくらい。でも普通、起動して最初の振動パターンって一番弱いはずだからこれでも一番マイルドなパターンなんだと思う。

　それでもせっかく買ったからには試さないわけにはいかない。

　どれだけ刺激が強くても受け入れる。

　ゲームのヒロインも、そう。

「ああああっ？！　あっ、あっ、んあっ、くうぅ――、んっ、ああっ」

　1つのおもちゃとは思えない強烈な愛撫と吸引。弄ばれている乳首から、乳輪から、快楽の濁流が背中を走って全身がぞくぞく震えてしまう。痛いくらいのはずなのに気持ちいい。このたった数分で吸引の刺激を受け入れてしまった乳首が、おもちゃの本当の技になすすべもなく蕩けてしまう。

（そ、そうですよね……機械ですから。吸いつく感じは生き物みたいな気がしていましたが、違いますね……やっぱり機械なんです。こん、な、あり得ないような振動で――っ）

　クる、クる、イかせられる、胸だけで。

　自分では止められない快感に脳を焦がされ、全身がこの機械にイかされる準備を始めてしまっている。

　あぁ、ダメ、もうダメ、ダメダメダメ……

「んっ、くぅっ――――――――っ、ぁっ――、はぁっ、はぁっ、はっ、はぁっ」

　目の前がちかちかして思考が蕩けていく。

　我ながらあっという間すぎる。情けない、こんな、初めて使ったおもちゃなんかに。

　当のおもちゃはイった私なんかお構いなしにまだ吸い続けている。軽く引っ張ってみても取れないくらい。こんなに惨めな思いをさせておきながら、なんて業突張りなんだ。

「あっ……」

　呼吸を整えてカップを外してみると乳輪の周りの毛穴がうっすらと赤くなっている。そうだ、バキューム器具で聞いたことはあったけど、やっぱり長時間はダメなんだ。

（たかだか5分くらいだったはずなんですけどね）

　乳輪も吸引のためかいつもより少し膨らんでいる。私のは他人より小さいと思うけど、これを使い続けたら……

「ま、まぁ5点満点中5点、ですかね。商品説明通りの性能は確かにありましたので、そういう意味で、です」

　昔はアマゾンのレビューがそれほど多くなかったので一つ一つが参考になったが、今はレビューも商品そのものも増えていて目新しいものは実際に使ってみないと分からない。　私のおもちゃケースがどんどん膨れていくのはそのせいだ。そろそろ古いのは処分していかないと。

（胸に吸いつく機械の敵……次回は用意しないといけませんね）



角どうなってるの？